『ミュージック ドキュメント 井上陽水×ロバート キャンベル「言葉の海へ漕ぎ出して』
2016年11月23日 TOKYO FM 約1時間50分
TVやラジオで話された言葉を書いてもいいのだろうか。権利問題もあるし、文字になると言葉が確定されてしまう。聞き間違えもあるだろう。勝手な省略。いいのか?
あれこれと迷いつつ・・・放送を聞けないファンの方たちのために。Just for you(^.^)
冒頭
ロバート キャンベル氏(以下 R) 2011年に入院中陽水の歌詞を英訳しようと思った。一日一曲。そして果てしない言葉の海に漕ぎ出た。
井上陽水(以下 Y) 「少年時代」の"風あざみ"、鬼あざみがあるからあるだろう。なくても、まあいいやと思って書いた。真実を提出することをモットーにしているわけではないので。キャンベルさんに「あざみは春の季語では?と指摘されたことがあって…。
歌 少年時代
R 自己紹介 省略(以後、キャンベル氏のfbやこの番組についての記事などで読めるものは省略)
陽水は20代から聞いている。英訳しようとして問題・疑問が続出。素晴らしく聞く人をけむにまく。不粋な質問をすることになるが、でもそれで新たな扉が開いたり。
朗読:青い闇の警告
R「窓のガラスが割れた…………心のように並べた」
1、いまの心の形のように?
2、心のゆくままに?
Y 折角こういう機会だから思っていることをいう。ガラスが割れる→エッジがある、傷つきそう。心が破片のように壊れていて、つまむと指が切れそう。
R 1で遠くはないですね。
Y 「俺」は、自分のことでもあり、現代に生きる孤独な人、むしろそのほうが大きい
歌:青い闇の警告
R いまを生きる人たち、massがどの時点で物語になるのか。
Y いろんな気持ちが交錯している。唄う時代により気持ちは違う。TVで星野哲郎氏が、頭の一行二行がすごく大事と言っているのを見た。それを潜在的に気づいていたのか。これは井上の実体験か?フィクションか?ということよりもっと優先するのは、え?どういうこと?と思ってもらうこと。
R 一人称は相手に語りかける時に強く出る。代名詞はあまり登場しないけど。「傘がない」もそう。
Y 会いたいという切なさより、人間として生まれるとこうなの?というほうが感情移入しやすい。
歌:傘がない
R なぜ名曲なのか。男女の障碍は普通は雨よりもっとハードな事柄。それが"雨"って突き放してて恋よりもっと大きなことかなと。自分を見返る…。心のように並べる、自分を置きかえる。感情移入という言葉を陽水さんから聞くとは思わなかったけど。
「飾りじゃないのよ 涙は」赤いスカーフは誰のもの?いろんな人へのインタビューが挿入。
朗読:飾りじゃないのよ涙は
R 赤いスカーフ my red scarf じゃないとスカーフが宙に浮く。官能的、これから車の中で起きることを暗示する?
Y そんなこと考えていなかった。可能性としては……。どこに帰属してるかわからない。その女性の自分のだと、ずいぶんひらめいてる?
R スカーフ=彼女の一部、自分じゃないけど自分の一部として。官能的
Y それ、いいですね。なんかスカーフが自分みたいにゆれている・・・それに一票。
R 一票いただいたけど、複雑。こういう話が生まれるということは、歌詞が緻密だから。(若山牧水の短歌を引用)ひとの心に残る文学には余白がある。あの女はそのあとどうなったかと考える。曖昧をどう聞き分けるか、自分の言葉に置き換える。
人々へのインタビュー挿入。
歌:カナリア
R 最初の二行で胸をつかまれる。愛玩物、小鳥。愛を喜びを与える。
Y おとぎ話に入って行く。アラビアンナイト?中東へ行くと女性の地位、カナリアの人権は信じられないほど低くて。
カナリアの歌を聞いて孤独な盗賊は平穏な夜に安らぐ。
次は、唄っている語り手がカナリアに要求する。「教えて」「うちあけて」
R その三行って今なのか、いつなのか。いままでとは違う時か。
Y たしかにそうかな。一、二行目はカナリアに尋ねてる。唄う本人はその最後の行に感情移入する。お客さん、聞いてるひとに?あるいは自分に?結局言えないでしょ?でも誰がいちばん好きなの?と。
R 次の一節。老人、少年、鳥籠、入り口の鍵はない。いつの話?唄っているひとの少年のころ?カナリアはいまは居ない?
Y えー、例えば番組の終わりの挨拶にしても〜ぼんやりしたものもあり、マジメな……
R 何を仰っているんですか。真面目にきいているんですよ。居ないんですよね、カナリアは…。
Y 指摘されると困るところです。休憩なんかいかがですか。
後編始まり
歌:とまどうペリカン
R 汗ふき出して真剣勝負。意外に直球で答えてくれていることに感謝します。不粋な振る舞いをご容赦ください。
Y いまだにその取り合わせがなぜ出てきたか、記憶にない。
R ライオンが先に行き、ペリカンが野獣性を見ながら絶妙な距離であとを行く。束縛しないで優しく。
Y 母性?見守る。強いが故の悲哀。それをわかっているペリカン。
R 若いときはライオンは男と。最近は逆。
Y ぼくも最近はそっち。百獣の王は女性でしょう。
R 疾走して行くのをたのしみに見ている男の人。
Y 結局永遠に答えは風の中。あのうぼくも最初はわかり易い感じで詩を書いてて、悪い奴はボブ ディランで(冗談ぽく)。韻を踏んでどんどん書いてく。それで少し予測してない言葉が出る快感。バランスも難しい。適当な距離感で言葉が出てくるとなかなかいいと思ったり。
R 歌詞はいつ?
Y ギターもって。メロディーも詩もないが。この音いいなとか。
R ひとつの音?音の連なり?
Y マ行始まりなら ♫みらいの〜 「み」っていいか、と。「いっそセレナーデ」なら♫あまい〜 これいいかな とか。
R 意味は後から?
Y そうですね。なるべく考えるようにしてる。少しはわかるように。
朗読:いっそセレナーデ
R I かwe か。
Y 考えたことなかったが二人の感じ。
Y I なのかwe なのか。目からウロコ ( 笑)
R (英訳では)I にしたが shall I …強い感じ
Y ありがち……泣こうか…自分が自分に言ってる…
R 「夢の間に」ひとつの夢?ふたつの夢の間?
Y いろいろ見つけて来るね〜ひとつの夢のほうがキレイ
R 英語的には、夢1と夢2との間のほうが…
Y お好みで…
R between twin dreams
Y それに一票
歌: いっそセレナーデ
朗読: ゼンマイ仕掛のカブト虫
R 何かのたとえ?大切なものを間違えて壊した、まではいい。現代詩として成り立つ。最後に人間が出てくる。大変なこと?
Y ずいぶん昔の曲、どういう気持ちかわからない。世の中でいう普通の幸せ?幸せってそういうことじゃないだろうと、強く思っていたころ。
「君の 顔笑った…君の目が こわれた」現代に生きるって普通の人がもっている人間性を殺していかないと生活できない。ちゃんとした神経の人はおかしくなる。それがふつうで、ぼくらのように普通に暮らしてる人は逆におかしい。人間性を失くしてるというか、そういう気分で書かれたような気がする。
歌:ゼンマイ仕掛けのカブト虫
R 大きな発見!これは逆転してるよ、それに気づく人がピュアで、それを笑う人がおかしい。陽水さんと話して初めてわかった。
朗読:最後のニュース
R 27年前ですね。ニュースはあまり変わっていない。出来事を思い浮かべながら?
Y ええ、気になったニュースを列挙して。そういう形でも作れるんですね。
R 日本映画のエンドロールに歌詞の英訳を頼まれて。陽水さんに見てもらったら、ここは違うというところが「ただ あなたに good−bye」
Y この「ただ」ですよね。
R 無意識に just for you あなたに向けて と。そうじゃないと言われてハッとした。
Y たくさんの中のあなたに向けて ではなく、いろいろあるけど、かけられるのは、この言葉くらいかな?good-bye 。
R simply good-bye なんですね。
歌:最後のニュース (今年のニュースの言葉をはさみながら)
R (終りの言葉的に) 二人だけの世界を作っているのではない、とても必要な言葉だと思います。色々なことを聞きだせてよかった。皮肉も混じり。
この対談は、アメリカ大統領選挙の直前。今は結果も出ていて。
それを含めて今年の色々な出来事に、そっとかける言葉でもあります。
Simply good-bye .
COMMENT
No Title
いつも陽水さんの声をぼ-と聴いてる私には、目からうろこだらけです。
反省。
シビアな対談ですね。
No Title
ありがとうございます。
読んでもらえて嬉しい。
聞ければもっともっとよくわかるのですが。ニュアンスとか。
わたしには録音する技術はないし、タイムフリーってそのまま聞くだけで、止めて聞き直したりはできないのね。
だから二回聞いただけのメモで自信がないのだけど。
わたしも、思いもしない指摘にびっくり。
そして、陽水も、自作なのに改めて検証する、みたいな態度が興味深いですよね。
こちらでお返事
コメントありがとうございます。
(差別的な発言をする人などに対して)「反感を持つのでは無く、嘆き、悲しみ、涙することが大事」とのご意見にハッとしました。偏見をもつ人への嫌悪感も偏見ですものね。
世界にはいい考えの人のほうが多い、お互いを尊重しあう若い人たちは沢山いる等々、希望を持たせていただきました。山本理理さんの詩画集も気に入って下さりうれしいです。
コメントは非公開ですが、わたしなんかが読むだけでは勿体無いです。
ラジオで卓球中継
昨日は間違って送信してしまい。
お手数をおかけしました。
勿体無いと言う、勿体無いお言葉(笑)ありがとうございました。
『ミュージック ドキュメント 井上陽水×ロバート キャンベル「言葉の海へ漕ぎ出して』
飾りじゃないのよ涙はの最後の行「曖昧をどう聞き分けるか、自分の言葉に置き換える。」
そう言う事ですね!ただ、陽水さんの楽曲に40年も触れていると置き換える言葉が見当たらなくなるんです。
なので数値化したり、擬人化したりして置き換えるが、しかし、結局永遠に答えは風の中(とまどうペリカンの真ん中の行)
やはり、TITLEのとおり無理!!
暫くは何も考えないでpositiveに聴いてみようかと思います。
放送を聞けない私達の為に本当にありがとうございました。
ツアーの終盤、かなりお疲れの様でした。
お体に十分気をつけて。
Re:ラジオで卓球中継
お読みいただきありがとうございます。
ピンポンのような言葉のやりとりでした。キャンベル氏もいっているように、陽水さんが直球で打ち返すのが印象的ですよね。
拾い書きでは空気を伝えられず残念です。
いろいろ刺激されましたが、結局自分は心のままに聴いてゆくのだろうと思います。