RKBラジオの番組『二丁目お茶の間劇場』に『私の中の井上陽水』というコーナーがある。井上陽水デビュー50周年記念企画。聞いておられる方も多いと思いますが、ゲストのミュージシャンや福岡の地元の方々などのコメントとリクエスト曲という構成で、昨年の何月からかまだ続いていたんですね!
思い出して3月2日(月)の回を聞いた。
登場したのは陽水の実家のご近所という福岡県糸田町のケーキ屋さんだった。子供の頃の話、最近帰郷した時の話など。母上にたくさん手紙が届いていた、上手な字で。子どもの頃から文章も上手だった。などなど興味深いお話でした。
文章も上手と聞いて、「わたしの中の“別の"井上陽水」を思い出した。曲でも歌詞でもステージでも気付かなかったもうひとりの井上陽水です。
「媚売る作家」という著書がある(1993年2月 角川書店 277頁)。
前年の『月刊カドカワ総力特集井上陽水』の内容に短編小説や新たにインタビューなどが追加された単行本。当時は購入せず後年古本市で見かけて手もとにあったらしい。
この本の「あとがき」に感嘆したのです。
型を踏まえた実用的な文章です。造語も暗喩もなく凝った文体でもない。
的確な言葉が置くべきところに置かれている。わかりやすくて、衒いのないまっすぐな文章。特に関係した方への謝辞は、意を尽くしてしかも饒舌過ぎず、真心が伝わる。
あの井上陽水がこんなに折り目正しい文を書くのか。まずそう驚いたのは失礼だが当然かもしれない。
でも、すぐもう一度読んで、美しい!と思った。
なぜだろう。いったい何がどう美しいのだろう。
活字だから文字のレイアウトというわけでもない。いうなれば、心地よいリズムで流れる澄み透った川の美しさ。
うまく説明できないのでその文章を少し引用したいが、実はあるはずの本が見つからない。記憶を探っていてふと思い出した。冒頭かどこかに、この本のタイトル「媚売る作家」に掛けた気になる一言があったような…。
ともあれ、その「あとがき」は、陽水の知らなかった一面として記憶に残ったのだった。
そういえば、手紙を書くのは好きと、もう何年も前に「長い坂の絵のフレーム」と共に聞いた。印刷する文章と私信ではまた違うだろうが、さらさらと書けそうです。母上へはどんなお手紙だったのでしょうか。
RKBラジオ 福岡市
二丁目お茶の間劇場 私の中の井上陽水 月曜日夜8時30分頃から
次の月曜日3月9日は高中正義さんで、初めて陽水に会ったのは「夢の中へ」レコーディングに参加した時とか。16日は九州の海の中道で行われたイベント参加の時のお話など。曲についてのお話も興味深い。早口で段落のない口調が印象的な方ですよね。3月のゲストなので続いて聞けます。
※ 1991年8月 九州「海の中道海浜公園」の「ACOUSTIC REVOLUTION」。忌野清志郎、細野晴臣、高中正義、井上陽水の「ハバロフスク&マフィア」の ユニットで参加。(YOSUI INOUE OFFICIAL SITE より)
COMMENT
No Title
「媚売る作家」のあとがき?読んでみました。
文章が美しい。そうかなあ(笑)
陽水って、頭がいい。そして文学的な表現をする。
どんなときも文章は上手ですね。
私にとっては、だれかの本の帯に書いている陽水の言葉のような、短い文章が、陽水らしくって好きです。
息子からくる手紙。母親にとっては宝物。
今は、ラインなので、「コロナ大丈夫?」って、息子にラインしたら、
「大丈夫やで。マスクもあるで。3週間テレワーク」
これが、ハガキとか手紙で届いたら、ずっと何回も読み返すと思う。陽水の母上は幸せな時代に、いい息子をもったと思う。案外、筆まめで几帳面なんですね。
昨年が50周年でよかったですね。
あちこち行って、観光して、土地の美味しいものを食べて、陽水ライブに行って、「次は○○の会場でね」って別れたのが、もう遠い昔のできごとみたい。
晴れ男ってだけでなく、運もいい陽水さんです。
ラジオのことでなく、世間話ですみません。
Re
早速コメントいただきありがとうございます!
久々の更新で、もうどなたにも忘れられてるかと思っていました。
>そうかなあ
ですか(笑)美しいんです!
わたしはきちんとした文章が書けないのでお手本にしたいです。
お手紙ですが、ラジオの方のお話ではお母様が処分してと仰ったとか。さっぱりした方なのでしょうけれど、惜しいことです。
今はどこへも行けなくて寂しいですね。“遠い昔”のような時間は、また巡ってくるのでしょうか。
こんばんは
一つ前の記事のコメント欄のお返事だったと思うのですが、アルバムはオリンピックに先駆けてリリースとの事♡
そうなのですかぁ?それなら嬉しくて暫く我慢もがんばれます。
No Title
Re
失礼しました。短く書いてみます。
コメントありがとうございます‼︎
昨年9月のfmcocolo の田家秀樹さんの番組でそう話していました。
アルバムはもうほとんどできている。来年オリンピックに先駆けて出ると思う
と、そんなふうに。
嬉しい知らせをご一緒に待ちましょう!
No Title
ご本人登場の最後の放送の時だったのでしょうか。嬉しいです。(๑˃̵ᴗ˂̵)
媚び売る作家のあとがき読んでみたいです♡
また…寄せてもらいます。
ありがとうございました(๑・̑◡・̑๑)
こんな雑誌が出ます
これが何かの「前触れ」だといいですね。
日本を代表するシンガーソングライター
聴いて、感じて、井上陽水。(仮)
昨年、音楽活動50周年を迎え た井上陽水 。
今回のPenでは、井上陽水の50周年の軌跡と、
作詞家いしわたり淳治による歌詞解説、
タモリが語る陽水の素顔、音楽制作面のこだわりや
昨年11月に発売したトリビュートアルバムの聴きどころなど、
井上陽水の魅力を余すところなく一挙に紹介。
編集部が自信を持っておススメする完全保存版の一冊です。
■井上陽水のデビューからの 50 周年を年表で振り返る。
■作詞家・いしわたり淳治が選ぶ歌詞で選ぶ「ベストアルバム」
■タモリさんが語る、陽水の素顔。
■音楽制作のプロが語る陽水
■トリビュートアルバム紹介
■私の好きな陽水の1曲
■陽水からの贈ることば ・・・他
ありがとうございます!
いつもありがとうございます。
嬉しいです。
「前触れ」
ほんと、だといいですね!
編集部が自信を持ってオススメって期待しちゃいますし、
陽水からの贈ることばも!
本編で紹介させて頂きました。ご了解くださいませ。
はじまり
私の中の井上陽水も来週からもつづくんですね。こちらも嬉しい。楽しみです!
陽水さんの文章については、幼なじみの方も「上手かった」とおっしゃっていましたね。
手元にあったので、媚売る作家を数年ぶりに開いてみました(…しまいこんでいてすぐにはわからない本も)。
掌篇小説「恐怖の起源」も凄いですよね。
まえがきにあたる「警告」も、陽水さんにしか書けないような文章で、最高で。
「あとがき」のさきさんの書かれている一言は、全6段落の中の2段落目にありますね。その2段落目ごと書いてみます。
今の私の立場は、この企画に関って御尽力をいただいた関係各位の皆様、実行にあたって働いてくれたスタッフ、そして好意で手助け、協力してくれた友人に対して、このあとがきのすべてのスペースに御礼、感謝の念を言葉にして埋めつくしてみたいという野望を持った「媚売る作家」ということになるだろう。
らしくもありながらまっすぐな感じですよね。
この「あとがき」は大まかには、陽水さん独自のというよりスタンダードなあとがき(本に関わる方への感謝)と言っていいと思って、だからこそだと思ったのですが、前は「うんうん」と普通に読んでいた気がするんですけど、今回はその真心にちょっと感動してしまいました。
言葉って文字で見るとまた違いますね。
私の中の井上陽水は子供会の世話役をされていた方のお話も面白かったですね。
子供会での海水浴で、小1ぐらいだった陽水さんが迷子になって、見つけたときは他の人たちとスイカ割りをしていたとか(笑)
Re
そうです、気にかかっていたのはその段落です。
「立場としてなんですよ御礼や感謝を述べて媚を売るのは」そう言っているのでしょう。いわば“前置き”です。
ざらめさんがいわれるように陽水らしいですよね。ひねりがある。
この後がわたしが感嘆した文章です。そのスタンダードな文章はこの“前置き”によると、意図して書いたものということになります。
そうわかっても尚、これもざらめさんが書かれたように、その一見普通の文章には決して作り事ではない真心がこもって感じられるのです。
あの“前置き”は陽水の照れ隠しだったのかも知れません。
Re
中でも、小貫信昭さんへの言葉の中の「本当に有難うございました」に心を動かされました。
ライブで生で聞けた経験もあるんですけど、なぜか文章だとまた。
確かに照れ隠しかもしれませんね。
前半の部分は、全体の構成を考えて(というよりも感覚なんですかね?自然に…)ここはこう書こうという感じかな?と思って読んだのですが、どこかに、ありそうな気がします。