井上陽水さま
お誕生日おめでとうございます。
お元気でご家族の皆さまとこの日をお迎えのこととお喜び申し上げます。と書きたいですが、新型コロナ禍の下では、そんな当たり前のことが難しい日々ではあります。
青い闇のささやきに怯えつつ手探りで暮らす2020年、昨年の50周年ツアーが遠い日のことのようにおぼろに思えます。
8月のいつでしたか、チャンネル変え変え見ていたテレビに、見知った建物が写っていました。長野県上田市にある無言館。戦没画学生の絵を集めた美術館で、郷里が近いので何度か行ったことがあります。特集らしい番組で、絵と共に、飛び立つ前の特攻兵の手紙、戦地と日本の家族との手紙なども紹介されていました。
話を聞きながらなぜか急に、陽水さまの父上は無事に帰って来られて本当によかった!と思いました。「恐怖の起源」に描かれた帰還した父上の姿(まだ生まれていなかった陽水さまの想像でしょうけれど)や危険な戦地での話が、帰れなかった学生の姿に重なって思えたのです。
語った話、語られなかった話はさぞかしあれど、父上は帰って来られて、井上陽水は生まれる。好む好まないにかかわらず天より贈られた才を持って。
浮世に住む我々の前に現れて50年。あなたに心を掴まれた者共にとっては、なんとありがたい運命の成り行きでしょう。
お祝いの文のつもりが妙なもの想いになってしまいました。
どうかお元気で過ごされますよう。
そのうちお会いできる日が来ますように。
きさら先
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