詩画集 「未来のあなたに」 山本理理
中央公論事業出版 (2016年3月15日 初版)
表紙に井上陽水の名はありませんが、タイトルの次の頁に「現代の神話・詩人井上陽水に捧ぐ」という献辞があります。
「わたしはなぜ絵を描くのか」の項では、「井上陽水の世界に触れたことで、わたしの中でスイッチが入ったのです」とも書いています。
わたしはこの本を井上陽水への愛と共感と憧れの手紙として読み、観ました。陶板画という絵画をわたしは知りませんでした。おそらく制限の多い方法で描くのではないでしょうか。その絵が発信する様々な感情や情景がわたしの気持ちを揺さぶります。
どの頁からも井上陽水の音楽が聞こえます。
この著者には陽水が直感でわかるのでしょうか。ああ、そういう歌だったのかと、何度も頷きました。
先達の言葉や詩の一節に絵が添えてあります。どちらが主というのではない。双方があって初めて伝わるものがあります。選んだ著者のセンスに驚嘆しました。
頭での理解や想像だけではなく、肉体をなおざりにしないところにも共感できます。だって、人間とはそして芸術とはそういうものでしょう?
この著者がたぶん望んでいるように、若い人たちに読んでほしいとわたしは思います。生きるのが
少し楽になるかもしれません。