今日も井上陽水(忍)

井上陽水ってどんなひと?わからないから知りたくて。今日も明日も明後日も。

   

「いわき」という町

いわき駅に着いたのは4月6日、「井上陽水コンサート2017”Good Luck"」の初日の前日だった。品川から出る特急ひたちの終点。この先は行ったことがない。ライブは明日だから行ってみようかと思った。常磐線各駅停車で、ときに海岸線を通る。穏やかな海。30分あまりの竜田駅で列車は止まる。先に線路はあるが除染が済んでいないから行けないことはニュースで知っていた。次の駅へはJRバスが待っていた。
 この先の海のほうに、東電の原発があるのだろうが、もちろん見えない。2、3人乗ったJRバスを見送り、もう一台町営バスを見送って、次の電車でいわきに戻る。何しに来たのやら。いつもわたしは中途半端だ。竜田駅の線路脇、かなり立派な桜が7分か8分咲きだった。

 いわきは来るたびに変わっている。初めて来た平市民会館の公演のころとは見違えるようだ。駅前が開発され、アリオス(いわき芸術文化交流館)仮オープンのときが第一の変化の姿。
 その次は震災後の「Live 2013 Missing 」のときだ。むしろ賑わっていた。夕暮れ時に新しいパンションに着いたバスから降りる制服姿の人たちを見て、ここは前線基地なのかと思った。いわゆる復興作業の。それで人が多いのだと。

 震災から6年、いわき駅は高架となり、高いマンションが増えている。すっかり都会。前にはなかったホテルで訊くと、「人口が増えているんですよ」との話。

 竜田駅の桜が咲いていたから期待してアリオスの裏側の川へゆく。桜並木は見えるがまだの様子。でも川の脇にはたくさんの菜の花が満開だ。裏口?の一本が三分咲きぐらいかと立ち止まって見ていると、川沿いの道を歩いて来た女性が「あと3、4日ね」と声をかけてくれた。「医者に言われてね、散歩してるの。向こうから来たけど満開は来週かな」と。そして「ここがアリオス。入ってみる?」と。

 公演がなくてもカフェや展示などに人々の姿のあるアリオスを案内してもらう。「今日はしまってるけど、ここで集まったりできるの。ピアノも使えるの」という部屋もある。通り抜けると広い公園へ出る。

「詳しいですね」と案内を感謝すると「ここの人じゃないの。避難して来てるの」と思いがけない言葉。さっき行った線路の向こうの町の名をいうので、「帰れるようになったんですよね」と言ってみると「だけど、もう帰らないの」と。

 「6年間、地震で壊れたままで放っておかれたでしょう?どうしようもないもの。若ければだけど、もう、ね」周りをみまわして「ここで暮らすの」

 街には店も増え、高層の”免震の”マンションが建ち、街を横断する緑地の公園で子供と遊ぶおじいちゃんらしい姿。「同じ町の人も沢山住んでるの」

 暇だからと案内してくれながらの当時の話。「関東の娘がね、泣きながら電話してくるのよ。早くこっちに来てって」「自分たちには何が起きてるかわからなくて・・テレビも見れないし。ガソリンもないでしょう?」「あっちこっちまわってね、ここに戻って。趣味のことしたり主人はボランティアしたり。病院もあるしね」
(聞けば数分のことだが6年間の歳月を想う。)

 人口が増えてるってそういうことだったのだ。住み慣れた家には帰れないが、なるべく近くに戻っておられるのだ。
 前線基地なら繁栄はいっときのもの。そうではなかった。着々と住みやすい町がつくられている。いわきという町が心やすらぐ場所に思えた。

  先日テレビで、この日にわたしが行けなかった線路の先の町の姿を見た。家が荒れ果てているのみならず、野生動物が跋扈しているという。町の再生は理想かもしれない。でも、病身だったり体力のない者に帰還するのは難しい。わたしだったら、やはり、いわきで暮らしたい。

 と、よそ者のわたしは簡単に書く。でもどれだけの迷いや思いがあることか。どうしてこんなことになったのか。それらを受け入れて決心したそれぞれの暮らしが続く。
 良いことがたくさんありますように!

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No Title

  • by ノッチ
  • 2017/08/21(Mon)11:50
  • Edit
初めまして。いわきで生まれ、いわきで育ち、10月で54年になりますノッチと言います。
4歳上の姉の影響もあって小学校低学年の頃から陽水さん一筋できちゃってます。
大学生の時に新宿厚生年金会館、日比谷野外、玉置さんとのジョイントへ。社会人になっても神奈川、東京国際フォーラム、NHK、会津、平市民会館、そしてアリオス、と節目節目で陽水さんに感動と元気をいただいて頑張れてます。
出社してパソコンにスイッチを入れると先ず、井上陽水のオフィシャル サイトを開き、続けて「今日も井上陽水(忍)」を開くのが日課になっています。
「いわき」という町、感慨深く読ませて頂きました。
町の様子、避難者との会話、短い時間だったと思うのですが、さきさんの感じ方、その表現に感銘いたしました。「ありがとうございます」と言いたくて投稿しました。大震災から6年5ヵ月が経ち復旧、復興が進んでいるように見える「いわき」という町ですが課題はまだまだ沢山残っています。みんなで助け合って、「いわき」は良い街だ。「いわき」はみんな暖かい。と言われるようにしていきたいと思っています。

今日も井上陽水を車の中で聞きながら出社した「いわき」のひとりより。

8月21日は福島県民の日

  • by no-yen
  • 2017/08/21(Mon)12:25
  • Edit
「いわき」に限らす、元「いちえふ」周辺住民は福島県内外で暮らしを続けています。
 積雪の関係で「浜通り」希望が多いそうですが、みなさん様々な事情があり、月日が流れ考えも変化してます。
 私はノッチさんより少々若輩ですが、さきさん・ノッチさんのコメントに同じ思いを寄せていると思います。
以上
 
 

あの時、そして今

  • by 大根おろし
  • 2017/08/22(Tue)13:19
  • Edit
さき 様

2011年3月11日「Tour 2011 Powder」(福岡サンパレス)
ツアーに参加しなかった時のチケットを見るたびにあの瞬間を思い出します。そして震災から一ヶ月位たった後、仙台の岩沼市にボランティアにいきました。

そして今、福岡県の浅倉市でボランティアの最中です。
被災された家から出た使えなくなった家具や日用品の分別作業をしてると泥まみれになった沢山のCDがありました。
一日も早くCDの持ち主の方が音楽を心から楽しめる環境になれる様にと想いながら分別をつづけました。

さきさんがおっしゃる様に被災者の方達は沢山の迷いや思いがあります。被災者のお年寄りの方が「お願いします」「ありがとう」と
ボランティアの1人1人に深く頭をさげている情景を目にしました暑い中けっこうな体力を使います。
おばあちゃん自分達は好きで来てるからと言ってもまたしばらくすると同じ事をしていました。
その方もまた浅倉に住みたいとおっしゃっていました。
中にはそっとしといてほしいと言われる方もいます。
ボランティアって始めるのは簡単なんですが何時も終わり方と気持ちの持ち方が解りません。
まだまだ未熟者です。

ノッチ 様

始めまして。
自分と同級生ですね、陽水さんと同じ筑豊で高校生まで暮らしていました。玉置さんとのジョイント懐かしいです。自分も大学生でした。去年の11月に岩沼市の方から突然連絡があり福岡で会いました。被災された時は高校生でしたのですっかり大人になった姿を迎えに行った空港で見た時はなんだか久しぶりに会った親戚みたいで感激もひとしおでした。

今回のボランティアで嬉しかった事をふたつ
参加を誘ってくれたのが学生達
ご飯をご馳走すると言ったら1人の学生がそのお金被災者の為に使って下さいと、この年になってもまだ若い人に訓えてもらえるとは・・・
次世代の人たちも立派に成長しています。

長文失礼いたしました。

真心の真ん中に・・・

  • by ノッチ
  • 2017/08/23(Wed)19:11
  • Edit
大根おろし 様

こんにちは。
コメント、有難うございました。遅くなって申し訳ありません。
大根おろしさん、さきさんもですが感受性、表現力が素晴らしいですね。まるで陽水さんの詩や声のようで真心の真ん中にずずずっ~と来るものがあって思わず唸ってしまいます。
2011年も今回もボランティアに行かれたのですか?
凄いです。なかなか出来ることではありません。
同じ歳の自分は・・・と感じてしまいました。

歳といえば、来週は陽水さんの69歳の誕生日ですね。
陽水さんも大根おろしさんも凄いなぁ~。
自分も自分に出来ることを精一杯、頑張ります。
それでは、また・・・

ありがとうございます!

  • by さき
  • 2017/08/23(Wed)23:20
  • Edit
ノッチさま

初めまして………

小学生のころからのファンと言われるノッチさんに比べるとチンピラが書く、こんなブログをお読みいただいているとか、ありがたく、また、お恥ずかしいです。

「いわき」の地元の方なのですね。最初訪問した時は、駅の近くにプラターズとかポール・アンカーとかをかけている喫茶店がありましたっけ。次の時には見当たりませんでした。
地元の方には、わたしにはわからないご苦労がたくさんおありかと思います。それなのに、たった一泊二日の滞在で、わかった風なことを書いたのもお恥ずかしいです。でも本当に、住みやすい暖かさを感じて何か嬉しかったのです。
叱られないでよかったです(笑)
陽水ファンの方は優しいですね。

きっと同じライブを何回も聴いているんですよね。またコメントいただけるとうれしいです。
いわきの様子もお知らせくださいませ。






Re:

  • by さき
  • 2017/08/23(Wed)23:31
  • Edit
no-yenさま

こんばんは
お読みいただき、共感のコメントをいただき、ありがとうございます!

心強いです、ほんとうに。

Re:

  • by さき
  • 2017/08/23(Wed)23:44
  • Edit
大根おろしさま

こんばんは
いつもありがとうございます

若い学生さんに教わったと書いておられますが、わたしもこうして書いてくださる「若い」皆さまに教わるばかりです。
今年は九州も大変でしたね。
ボランティア、ご苦労さまです。ほんと、その地でなければわからないことがあるのでしょう。至らなさにため息が出ます。うろうろあるく、ばかりです。

No Title

  • by 大根おろし
  • 2017/08/24(Thu)18:56
  • Edit
ノッチ 様

お返事頂きありがとうございました。
さきさんがおっしゃる様にノッチさんにも「いわき」の皆さん復興中の方々にも沢山良いこと、嬉しい事がありますように。

さき 様

「至らなさにため息が出ます。うろうろあるく、ばかりです。」
それだけではありません。
会場を案内していただいた方は、さきさんにお話を聞いてもらってどれだけ心に安らぎを覚えたことでしょう。三分咲きの桜と菜の花の傍らで優しく真剣に耳を傾けるさきさんとその女性の思いと迷いを打ち明ける姿が目に浮かびます。

ブログを通じてこうして何人かの方たち交流を持てて感謝しています。暑い夏が早く走り去ってほしいです。(夏は苦手)
レモンのジュースを作るのに困りますし。

お二人共お体に気お付けて。

No Title

  • by 猫砂
  • 2017/08/29(Tue)00:41
  • Edit
今回、さき様が書いて下さった
「いわき」の事、
そこに集まった皆様からのコメント

何度も何度も読んで
泣きそうになっています。

こんな素敵な場所があり
響き合える人々がいる事に
改めて感謝感謝です。

「いわき」も温暖な町ですが
「ここ」も本当に温かいな〜〜って(涙)

Re:

  • by さき
  • 2017/08/29(Tue)18:28
  • Edit
猫砂さま  こんにちは

そうなんです、わたしもみなさまのコメントを泣きそうになりながら読みました。
いわきでお会いした方は、ホテルの近くまで道案内のみならず、一人旅のわたしに晩御飯の心配まで、お店を教えたりしてくださいました。このやさしい気持ちは、あちこちで生活されて苦労されたからかと思いましたし、いわきをご自分の町と感じられるからかとも思いました。
そして、ノッチさんの投稿を読んで、わかったのです。ノッチさんのような方がおられるから、避難された方たちも安心してこの町で暮らすのだろうと。ありがたいです。

福島県民の日に書いてくださった no-yenさんの地元ならではの言いまわしには福島愛を感じました。「いちえふ」は漫画のタイトル(未読ですが)で知りました。「浜通り」って岩手県でも使いますよね。独特のよび方が面白いです。移住しているのは、いわきだけではないと、その沢山の方々を想像させられました。

大根おろしさんの、ボランティアの現地でのお話と「終わり方と気持ちの持ち方が解りません」は深いお気持ちを感じました。

そしてみなさま、猫砂さんも、わたしの拙い文章を何倍にも増幅して読んでくださるのだと思います。
そういう感性は、陽水の歌を聴いているからかもしれませんね。想像力といってもいいかも。

それとも、そういう方たちだから、陽水を好きなのかも。

いずれにしても根本に陽水の歌と心があるわけで、わたしとしては、陽水に感謝感謝です。

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